コンビニに行けばいつでも、ものすごい種類のチョコレートが待っている――。私たちはなんと幸せな国に暮らしているのでしょう。お気に入りの商品はいつも同じ味で安心しますが、カカオ豆だって農産物。本当は産地やその年のコンディションで味を変えるのが当然なのです。
お豆も元気が一番!
ハワイ・オアフ島カイルアに工場兼店舗を構えるクラフトチョコレートメーカー「マノアチョコレート」。創業者のディランは、カカオ豆を仕入れる前にまずサンプルを取り寄せます。
「健康な豆であれば、それはいいチョコレートになる。逆に豆の状態で味見すらしたくないようなのものは、どうがんばってもいいチョコレートにはできないよね」
同じ体格が好ましい
ディランのもとに届くのは、収穫から発酵、乾燥の工程まで終わったカカオ豆。まずはその見た目をしっかりチェックします。
「豆のサイズが均一で、割れていないものがベスト。傷があると、そこから菌が繁殖してしまったりすることがあるからね」
豆全体をカビが覆っているようなものも避けるといいます。農園で行われる発酵、乾燥工程の良し悪しが、豆の運命を大きく左右するのです。
生豆を、いざ実食!
次に味見をします。殻を割って、中のカカオニブをそのままポリポリと食べるディラン。
「うん。これはナッツのようなバナナのような味。渋みが少なくていいね。こっちはもう少しフルーティなニュアンスを感じるな。バランスのとれた酸味がいいね」
味見の際には「苦み」「渋み」「酸味」を中心に判断します。渋みが高すぎると、いいチョコレートに仕上げるのはなかなか難しいのだそうです。
まるでコーヒーの如し
豆の味を分析して実際に原料を仕入れたら、チョコレートメーカーが最初におこなう作業は「焙煎」。コーヒーにも「深煎り」「浅煎り」などがあるように、カカオも豆の状態によって焙煎度合いを調整するのだといいます。
「生豆でテイスティングしたときに、フルーティでフローラル、柔らかな酸味の豆はライトロースト。ほどよい苦みと重さがある豆はミディアムローストだね」
大量生産のチョコレートは、さまざまな豆をブレンドすることで常に一定の味わいをお手頃価格で提供してくれます。この安定供給もちろん、私たちの現代生活には不可欠。でも、ひとつひとつのカカオ豆とまっすぐ向き合うこんなチョコレートづくりもあるのだということを知ると、これまたなかなか興味深いものです。