「ジュニパーベリー・コリアンダー・フェンネル・カルダモン・メレゲッタコショウ・ラベンダー・アイリス・レモン・オレンジ・シダーリーフ・アンジェリカ。」
この深いグリーンのボトルが印象的なクラフトジンのボタニカルだ。クラシックな切手を模したラベルには帆船が描かれ、かつて英国船が度々訪れたホノルルの古き歴史を物語っている。
下部には、薄い文字で慎ましく”LONDON DRY”という表記が。はて、ハワイアン・ジンなのに”ロンドン・ドライ・ジン”?実はこの「ロンドンドライ」とは、ジンの製造方法と成分のカテゴリーによる呼称なのである。
・100リットルのアルコールに対してメタノールが5g以下。
・香り付けを自然の植物とともに行い、伝統的な蒸留機で再蒸留されていること。
・蒸留後原酒の状態が70%以上の度数であること。
・蒸留後に水以外のものを加えないこと
・37.5°以上のアルコール度数であること。
などなど・・・これら様々な条件をクリアしたジンであれば”ロンドン・ドライ・ジン”と表記することができるのだそうだ。地理的制約でシャンパーニュ地方で作られなければシャンパンと呼称できないそれと違い、東京で造ろうとマウイ島で造ろうとLONDON DRYと冠すことができる。なるほどなるほど。封を解き、香ってみればまさに正統派ドライジンのそれである。
私は不意に「江戸前寿司」を思い出した。狭義には東京湾で採れるネタの寿司のことを呼ぶそうだ。同時に広義に言えは「握り寿司」全体を指し示す言葉としても呼称される。だから、大阪やシンガポールにも粋な「江戸前寿司」の良店が存在する訳である。
ちなみにジンにまつわる書物によると、ロンドン・ドライジンの中で、実際にロンドン市内で造られているジンは「ビーフィーター・ジン」のみだそう。え?!タンカレー・ゴードン・ボンベイといった親しみのあるジンは、実はロンドン以外の町で造られている!?・・・なるほど。南の島でロンドンドライが生まれても何の不思議はない。
さて。この度、正規輸入で日本初上陸となるこのFID STREET GIN。未だ日本のジン愛好家にもほとんど未知の存在である。
英国海軍出身のキャプテン・クックことジェームス・クックが、未知のハワイ諸島の存在を欧州に知らしめ、翌年カウアイ島に初上陸したその時に思いを馳せながら、じっくりとハワイ産のジンを愉しんでみたい。”FID STREET”というその名にも当時のヒストリーが込められているらしい。味わいのレビューは、また時を改めて・・・
ちなみにジェームス・クックはハワイからKava(カヴァ・カヴァ)」とも呼ばれる飲み物を持ち帰ったと言われている。コショウ科の木「ヤンゴーナ」の根を砕き、水を加えてこした、ポリネシアでは実に3000年も前から習慣的に飲まれていたというものだ。
スペインのスパークリングワインであるCAVAとは全く異なるそのKAVAという飲み物も、アルコールのような酩酊感を覚える飲料だという。何それ?と話を広げたところだが、文字数の関係で、この話もまた別の機会に。