産地や品種によって、その価格が大きく異なるコーヒー豆。じつは、国や地域ごとに評価基準が異なることから、一般消費者にはなかなか理解するのが難しいのだといいます。
「でも、コーヒーチェリーが育つ際の特徴を学べば、少しだけ値づけの仕組みがわかってくると思います」
そう話すのは、コーヒーがトピックとなるたびにbowlがそのお知恵を拝借しているプロフェッショナル、ロッシ国枝さんです。
“寒暖差で高まる糖分”がカギ
「一般的に、高級豆は標高の高い場所に畑があることが多い。高地の特徴のひとつが、寒暖差の大きさです。寒暖差があると、作物は生き延びるために糖分を生み出す。結果、そこで実る果実は、糖分が多くて高密度、さらには含水量も多い出来になります」
こうしたことから、世界的な高級豆の畑は1500mから2000mといった高地に多いと国枝さん。一方、ハワイの高級豆・コナコーヒーの畑の標高は、300mから600m程度。しかし、海と陸の間で風の起こる海洋性気候の影響で、前出の高地に匹敵する寒暖差に。そのため、上質な豆が収穫されるのだといいます。
「こうした昼夜の寒暖差が大きい地域では、温暖な気候が続く低地の畑よりも生育速度がゆっくり。収穫時期を待つことができるので、より大きなコーヒーチェリーになるまで育てることが可能だとも考えられます」
熱伝導率と焙煎レベルを考える
標高の高い場所で収穫された高級豆。焙煎する方法も、一般の豆とは異なるそう。
「高密度で中身が詰まっているため、熱伝導率が高いんです。そのため、高温で短時間さっと焼けば、きれいに全体に火が回るという特徴があります」
一方、グレードの下がる豆は、中の空洞率が上昇。熱の伝導率が低いため、比較的長時間焙煎する必要がでてきます。その際、もともと低い水分量を飛ばしすぎないよう、低温で焙煎するのだと国枝さんは説明します。
「焙煎度合いが上がるほど、ロースト香の高い深煎りの豆になる。もちろん、それを楽しむのもコーヒーの味わい方のひとつですが、高級豆の場合はよりシンプルな焙煎で、豆本来の味を堪能することをおすすめします」
冒頭の写真は、どちらもコナコーヒー。左手前はナチュラル製法で発酵したもので、ベリーやナッツを思わせる甘味が特徴。右奥は、コナ産の中でも特に希少性の高いゲイシャ種。カカオのような風味に続き、さわやかな酸味が抜ける軽やかな味わいです。