「ハワイでなぜフレーバーコーヒーがここまで人気になったのかはわからない。でも、もともと南国を思わせる人気のフレーバーがたくさんあった、っていうのは大きいよね」
前回に引き続き、オアフ島の焙煎士アルフレッド・コッシーナにフレーバーコーヒーのお話を聞いています。いまやフレーバーコーヒーといえばハワイ、というイメージもありますが、先週ご紹介したようにフレーバーシロップの起源はヨーロッパ。
「マカダミアナッツ、バニラ、ココナッツ…。コーヒーと相性のいい南国のくだものがハワイにはたくさんあった。だからこれらのフレーバーで仕上げたコーヒーは、おみやげとしてすごく人気が出た、そういう側面はあると思うよ」
その実態は…化学の授業!
「ハワイ特有のフレーバーで仕上げた」とはいっても、原料すべてが天然香料というわけではありません。実際、他社製品も含めてフレーバーのほとんどは人工香料。天然香料が使われることもありますが、多くの場合人工香料と併せることでうまく香りを引き立たせる、それが現実です。
「こんなフレーバーのコーヒーが作りたいんだ!」
取引先からのリクエストを受けると、アルフレッドはフレーバーメーカーにオーダー。サンプルを取り寄せ、それをコーヒー豆の上でいかにうまく花開かせるかを試行錯誤します。
「サンプルの取り寄せだけでも時間がかかる。新しいフレーバーコーヒーを製造する場合は、3、4カ月はかかるね」
結構な大仕事なのです。
香りにも向き不向きが
「香料をコーヒー豆に混ぜるだけでしょ」
そう思う方もいるかもしれませんが、フレーバーコーヒーはそんなに簡単ではありません。フレーバーの特徴によって使用する量や、製造にかける時間、そして製造方法自体すら変わる。添加したときにいい香りがしても、コーヒーとして淹れたときに香りが立たなければ意味がないそうで…
「フレーバーイン、フレーバーアウト、その調整がこの仕事の鍵を握るんだ」
何度も試作を重ねても、どうしてもうまくいかない場合もあります。
「パパイヤはだめだった。香りが穏やかすぎて、コーヒーの味に負けてしまう」
また、リリコイ(パッションフルーツ)、パイナップルなど、いかにもハワイなフルーツなんかも向かないそう。
「酸が強いフルーツはだめ。コーヒーの苦味をより際立たせてしまうんだよ」
詳細な製造方法は企業秘密、とウィンクするアルフレッド。そんな彼の手塩にかけたフレーバーコーヒー、ぜひ一度ご賞味あれ。