「10数年前、ニューヨークで完熟のマンゴーを見つけるなんてほとんど不可能だったよ」
「マウイプリザーブド」のアンソニーはそう昔を振り返ります。当時彼が働いていたのは、アメリカ本土・ニューヨークのレストラン。世界一ともいえる大都市、なんでも手に入ったのかと思いきや…
「マンゴーを探しても、硬い未熟なものしかなくてさ。その点ハワイは別世界だったね。熟したトロピカルフルーツがいつでも手に入るんだから」
もっとも、オンラインショップが飛躍的に発達したいまならだいぶ状況は改善しただろうけど、とアンソニー。それでもこの自然の恵みあふれる太平洋の島々に魅入られた彼は、2008年に妻と猫一匹と移住してきたのでした。
副産物からアイデアが
アンソニーがハワイで出会って驚いたフルーツに、マウイゴールドパイナップルがあります。高い糖度と低い酸度が特長のこの品種。
「とにかくその甘さに驚いたよ」
もちろん、ニューヨークの市場ではまず出会えない味わいです。そのマウイゴールドを使って、アンソニーがまず作ったのは「スイートアンドスパイシーパイナップル」という商品。マウイゴールドのシロップ漬けにチリペッパーを合わせたというもので、このときにできあがった副産物がたくさんのパイナップルシロップでした。
「これを活用して『パイナップルジェリー』を作り始めたんだ」
「ジェリー」というのは、果汁をペクチンで固めたスプレッドのこと。ジャムと違って果肉が入っていないため、滑らかなテクスチャーが特徴です。
正真正銘、ハワイのパイナップルで
このマウイゴールドパイナップルジェリー、現在では生産されていません。代わっていまやマウイプリザーブドの看板商品のひとつとなっているのが、「マウイゴールドパイナップルジャム」です。
「ジャムなら、パイナップルの果肉もすべてぎゅっと凝縮した商品を作ることができる。僕自身、純粋にジェリーよりもジャムが好き、っていうのも大きかったんだけどね」
210gのひと瓶に、じつに2個以上のマウイゴールドが詰まっているというから驚きです。
「パイナップルジャムはハワイでも多く出回っているけど、残念ながらハワイ産パイナップルはほとんど使われていなかったり、砂糖の量がものすごく多かったり。僕は本物の、ハワイの、マウイの、パイナップルジャムを作りたかったんだ」
外から移住してきたからこそ感じる、ハワイ産食品のすばらしさ。その恵みに感謝しながら、アンソニーは自分の信じる「本物」を、今日も作り続けます。