「ここへ来るってことは、ちょうどワイナリーに見学に行くのと同じような感じね」
オアフ島カイルアのクラフトチョコレートメーカー・マノアチョコレートで、オーナー夫人のタミーがそう迎えてくれます。チョコレート工場がワイナリー? 頭のなかに、はてなマークが浮かんできます。
どこ産の豆がお好み?
「ワインを選ぶとき、どんなところを見る? そう、産地とか、ぶどうの品種なんかを見るわよね。私たちはカカオに関しても、同じことを大切にしてチョコレートをつくっているの」
たとえば、フランス、ボルドーの赤が好き。中でもぶどうはメルローが好みだな。ワインが好きな方であればそんなふうに考えると思います。でも、チョコレートはどうでしょう。産地、さらには品種まで考えたことはないという人がほとんどではないでしょうか。
ワイン=おいしい紫の液体?
そもそもチョコレートの原料であるカカオを、実際に見たことがある人は少ないと思います。冒頭の写真がそれなのですが、驚きませんか? タミーが実験的に育てているものの一部を見せてもらっただけでも、こんなに色、形、サイズがさまざま。いろいろな品種があるのです。
「ワインで言えば、『原料が何か? そんなことはあまり考えたことはないけど、この紫のドリンク、なんかおいしいよね!』。カカオのことを知らずにチョコレートを食べてるって、それと同じことなのよ」
確かに。彼女の言葉にぐうの音も出ません。
蔵付きの菌、ならぬ農園付きの…?
収穫されたラグビーボールのような形の「カカオポッド」、割ると中に30から60の種が入っています。種は白くぬるぬるした果肉に包まれていて、この果肉ごと一週間ほどおくことで発酵を促します。この発酵工程は収穫された農園でおこなわれるのですが、「その環境ごとそこにいる酵母やバクテリアが違うから、それによっても味が変わるのよ。本当にビールやワインの醸造蔵みたいでしょ!」
個性あふれる原料のカカオ豆。その一つひとつと真剣に向き合い、最高のチョコレートバーに仕上げる職人こそが、クラフトチョコレートメーカーなのです。