2026 10.13 tue

アトリエ閉鎖の衝撃
Jana Lam直撃インタビュー前編


The Shock of the Studio Closure and Jana's Thoughts
Jana Lam

2026年初夏、「メイド・イン・ハワイ」のファッション・アパレル業界に衝撃が走りました。15年以上にわたり、デザインからシルクスクリーンプリント、縫製までを少人数の女性チームで行い、ローカルに絶大な支持を集めていた人気ブランド、ジャナ・ラム(Jana Lam)がカカアコにあるショップ兼アトリエをクローズするというニュースがソーシャルメディアで発信されたからです。

「エンドレスサマー」をテーマに掲げ、丁寧に一つ一つ手作りされるバッグやポーチを主力アイテムに、アトリエで生産されてきたメイド・イン・ハワイ製品の数々。オーナーデザイナー、ジャナさんが手がけるキュートでウィムジカルな唯一無二のデザインが人気となり、そのディティールやクオリティーの高さは、オシャレに敏感なローカルだけではなく世界中のファンを魅了し、愛されるブランドへと成長しました。

ハワイのセレクトショップで扱われるにとどまらず、アトリエにはリテールショップを構え、ホノルル・クッキー・カンパニーやハワイアン航空、フォーシーズンズ・コオリナ、フードランドなどの大企業から、ココムーン、ファイティング・イール、イエレー、ビアラボなどローカルのファションブランドやブルワリーまで、幅広い分野でデザインコラボを行い、ジャナ・ラムのデザインはいつしかハワイを象徴するシンボルの一つとして認知されるようになりました。

ジャナの決断とその背景

「ジャナ・ラムというブランドは、私の人生に多くのものをもたらしてくれました。この15年間、それはまさに私そのものであり、情熱であり、アイデンティティーでもありました。それを閉じる決断を下すには、何か大きな出来事が必要でした」衝撃のニュースから数ヶ月が経ち、現在の心境を語ってくれたジャナさん。

「2025年2月に父が亡くなりました。父の人生はまだこれからという時だったし、母の健康状態も良くなく、私の人生は一変してしまったの。なんとかその時期を乗り越えることができたけれど、やがて逃げ場がないような閉塞感に襲われるようになってしまった。手放せるものは何か?自分のビジネスしかありませんでした」

常に疲れ果て、ストレスを抱えて子どもたちと向き合う余裕さえない母親の姿が、子供達に悪影響を及ぼしていると気付いたジャナさんは、工房を閉じることを決意。

「最終的に言えることは、私自身がこの章を閉じて次へ進む準備ができていたということです。心の奥底では、そろそろ潮時だと気付いてもいました。でも、自分の一部として深く根付いてしまったものを手放すというのは、自分自身に対して認めることさえも難しいものです。

それでも、本来の自分を振り返ってみたときに、一つのことをこんなに長く続けてきたこと自体、実はすごいことだったんだって思うようになりました。私はもともと物事を動かし、変化させていくことが好きなタイプ。だから、決して理想的な状況での決断とは言えないけれど、ブランドを閉じることは私にとって悲しいことではなく、新しい始まりなのです」ジャナさんはすっきりとした表情で、話してくれました。

ブランドがジャナに気づかせてくれたこと

「私がジャナ・ラムというブランドをスタートさせた時、『メイド・イン・ハワイ』を使命に掲げていたわけではありませんでした。ただ純粋に、テキスタイルへハンドプリントをすることが好きだった。それが全ての原点でした。手作業でそれを行うことが難しいことを知るにつれ、この方法がいかに大切なものであるかを時間をかけて実感するようになっていきました。

おおよそ誰もがビジネスの拡大や成長を望むものですが、製品の『手作り』を犠牲にすることなく、ある一定の規模を超えて成長を続けていくことが不可能だと気づくには、長い時間がかかりました。そして、事業の拡大や成長そのものが、もはや自分にとって重要ではないと気づくには、さらに長い時間を要しました。私が求めていたのは、ただ美しくユニークなものを作ることでした。流行を追った大量生産品を作り、一時的に完売したとしても、1年後には誰からも顧みられなくなるようなものを私は作りたくなかったのです」

自分や自身のビジネスの本質に気づくのに多くの時間を費やしても、真剣に向き合ってきたからこそ後悔なく次の人生のチャプターへと突き進んでいくジャナさんなのです。

経験が語る「メイド・イン・ハワイ」への思い

ブランドとしてメイド・イン・ハワイを貫いたジャナさんの視点から、今のハワイのファッションやデザイン界をどのように感じているのか、気になる状況を聞いてみました。

「AIや中国企業の台頭を背景に、多くのブランドが画一的な製品を次々と生み出しており、小売業界の状況は悪化の一途を辿っていると感じています。私は、真摯な姿勢と誠実な想いを持つ地元のスモールビジネスであれば、業種を問わずに応援していきたいと考えています。

現在、残念なことに粗悪な商品が市場に溢れ、消費者がどうやってブランドを見分けているのか不思議に思うこともあります。だからこそ『メイド・イン・ハワイ』やハンドメイドのビジネスを応援して、その価値を世に広めるために声を上げ続けることが大事だと感じています。例え私自身はもう生産や小売業に携わっていないとしても、です」ジャナさんのリアルで誠実な想いは、我々bowlにも通ずるところがたくさんあります。

そして、日本へイベントで何度か足を運び、日本にもたくさんのファンがいるジャナさんからのメッセージ。

「皆さんに会えなくなってしまったことは本当に悲しいけれど、私のアートやデザインを通じて、これからも私たちを繋げてくれるようなプロジェクトやコラボレーションを実現していきたいと考えています。アーティスト、ジャナ・ラムの今後の展開を楽しみにして欲しいです!」

アトリエをクローズし、ハンドメイドの製品は終了しても、この15年間着実に積み上げたジャナ・ラムのアートセンスやブランド力を使って、アーティストとして活動を続ける予定のジャナさん。次回は、新しいチャプターについて、そしてジャナさんの思いをさらに深掘りしていきます。(次週へ続く)

			

BRAND ブランド紹介

Jana Lam
ジャナ・ラム オアフ島

ジャナ・ラムはホノルル市カカアコ地区にデザイン工房を構え、丁寧なハンドメイドバッグが人気となり、テキスタイルとライフスタイルのブランドとして愛されるブランドへと成長しました。2026年6月に工房をクローズし、今後ジャナ・ラムはアーティストとして、コラボレーションを中心に活動をしていき、彼女が作り出すユニークなテキスタイルデザインやアートを展開していきます。