「『アンティリリコイ、売り出し中』。そんな記事をある日新聞に見つけたのよ」 ローリー&トニー夫妻のブランドオーナーとしてのスタートは、なんとも小説のストーリーのようなものでした。
アンティリリコイ for SALE
パッションフルーツを使ったジャムやマスタード、ドレッシングなどをつくるカウアイ島のメーカー、「アンティリリコイ」。もともとはトム・キャシディという男性が、1990年にスタートしたブランドでした。彼が先の告知を新聞に掲載したのは2001年。高齢だった義理の母のためにカリフォルニアに移ろうと考え、ビジネスを売りに出したのです。 「夫のトニーとも相談して、すぐにビジネスを引き継ぐことに決めたの。なぜか迷いはなかったわ」
赤土染めからリリコイビジネスへ
カウアイ島には、島の赤土を生かして染め上げる「レッドダートシャツ」というアパレルアイテムがあります。このレッドダートの代表を務めていたローリーですが、こちらは当時の共同経営者に任せ、本格的にアンティリリコイの経営へ。当時のラインナップだった、パッションフルーツジェリー、シロップ、マスタード、ドレッシング、バター。この5つの作り方について、トムから手ほどきを受けたといいます。
「まったく馴染みのない業界だったからね。一つひとつジグソーパズルをはめていくような作業だったよ(笑)」。当時を振り返りつつ、トニーは豪快に笑います。
おじいちゃんの始めたおばちゃんブランド
「私たちが引き継ぐ前、本当の“アンティリリコイ”は70代のおじいちゃんだったのよ、って言うと、みんな大笑いするの」
アンティリリコイは、日本語で言うと“パッションフルーツおばちゃん”なのです。
そんな素敵なブランドネームのもと素敵な商品を開発したトム、昨年2018年7月9日にこの世を去りました。49歳で急逝した妻の6カ月後だったそうです。不謹慎かもしれないけれど、彼のお別れの会は笑い声にあふれてとても楽しかった、とローリーは話します。そんな愛あふれる人たちのリレーがあってこそ、アンティリリコイは今日も世界中においしい笑顔を届けているのです。
※2020年夏、ブランドは新オーナーのメリッサ&ジム夫妻に引き継がれました