ハワイで栽培された実からつくるオリーブオイルがある。そう聞けば、驚く人がほとんどではないでしょうか。ビーチリゾートのイメージが強いハワイですが、最高峰マウナケアは標高4207m。その高低差と吹く風によって、同じ島内でも気候が大きく異なります。温暖な海辺から熱帯雨林、牧草地の広がる高原地帯、荒涼とした岩場など、小さな島々がじつに多彩な表情を見せてくれるのです。
ハワイとローマ、感謝の交換
ハワイ島の西、サウスコナに畑をもつダグラス・マッカーナは、コーヒー生産者。しかし、最近コーヒーと同じく情熱を注いでいるのが、オリーブオイルづくりだといいます。現在コーヒー畑とは別に、島北部のワイキイという場所でオリーブ畑を営むダグラス。物語の始まりは、2004年にさかのぼります。
「娘がロンドンで学校に通っていたので、会いに行くついでに妻とヨーロッパを周遊したんだ。自慢のコナコーヒーとフレンチプレスを持ってね。そうしたら、旅の終盤に訪れたイタリア・ローマで、コーヒー豆がまだ残っていた。そこで僕は、宿泊していたホテルのフロントマネージャーにそれをプレゼントしたんだ」
すると翌日、マネージャーはなにやらお返しの品をダグラスに持ってきたそうで…
「大きなワインボトルサイズのオリーブオイルだったんだよ。家族の畑でとれたものだと言って。そのできごとがきっかけで、ハワイでもオリーブの木を育てられないかって考え始めたんだ」
木は育てど花咲かず?
ハワイに戻ると、ダグラスはリサーチを始めました。アメリカにおけるオリーブの一大生産地、カリフォルニアの専門家にアドバイスを仰いで、いくつかの品種を選定。サウスコナにある自身のコーヒー畑の遊休地に、オリーブの苗を植えました。
「何年かかけて、すごく大きな木に育った。でも木が育つばかりで、一向に実をつけなかったんだ」
そこで彼が知った事実は、オリーブが実をつけるためには一定期間の低温状態が必要だということでした。
「専門家が言うには、摂氏10度以下の状態が年間で200時間必要なんだそう。そこで休眠期間に入り、また温度が上がって眠りから覚めると花をつけ、実を結ぶ」
非常に温暖なサウスコナ。オリーブの木は休眠に入れなかったのです。ちなみにコーヒーはというと、水分量の変化によって休眠期間に入る植物。冬にハワイが乾季に入ることで休眠に入り、春の雨と共に花をつけます。ひと口に休眠期間といっても、植物により異なるのです。
ダグラスのオリーブオイル栽培挑戦記、次回に続きます。