「非加熱・無濾過」
はちみつのラベルで見かけるうたい文句です。でも、非加熱・無濾過って、具体的にどういうこと? なんとなく体に良さそう、と手に取ってしまうかもしれませんが、それでは単に思考の放棄。前回に引き続き、ハワイ島の養蜂場「ビッグアイランドビーズ」のオーナー、ウェンディ・グラッドに話を聞いてみます。
ひと口に「濾す」といえども
「私たちが製造工程でおこなうのは、『ストレイン(strain)』。『フィルター(filter)』とは全く違うの」
話を理解するためには、まずこのふたつの動詞が第一関門でした。辞書を引いてみるとどちらも「濾す」という日本語で説明されているのですが、はちみつ製造においてその意味合いは大きく違うといいます。
「ビッグアイランドビーズで収穫したはちみつは、蜂の巣の中と同じくらいの温度までにしか過熱をしない。つまり、自然に存在しうる状態以上の温度にはしないということ。そしてメッシュに通すことで、巣の一部などの異物を取り除く、これが『ストレイン』よ」
対して「フィルター」、一般的に「濾過」といわれる工程では、はちみつを高温まで熱します。これを、珪藻土やプラスチックシートなど、非常に細かい目に通して濾すのだといいます。
「この方法だと、本来はちみつの中に含まれている酵素、プロポリスや花粉などの栄養成分は破壊されたり取り除かれてしまう」
ちなみにプロポリスとは、樹液とみつばちの分泌物が混ざったもの。巣の外からの細菌侵入を防ぐための、非常に抗菌作用の高い成分です。
本来の姿とは?
多くの製造者が高温に熱して細かい目で濾す目的は、はちみつの結晶化と深く関係しています。
「非加熱のはちみつは結晶化する。これは自然なことなの」
しかし、結晶化するということは瓶詰め作業に影響しますし、出荷されてからも「固まってしまっている」と、クレームの原因になることもしばしば。確かに私も、クリアな琥珀色の、チューブを押せば難なく出てくるものをはちみつだと思い込んでいた節があります。でも、それは誤った常識。中には、加熱はちみつをコーンシロップなどで薄めて「はちみつ」として出荷されているものもあるというので要注意です。
「まっとうな方法ではちみつを作る生産者を、ぜひサポートしてほしいわ」
ウェンディからひと通り話を聞いてみて、不勉強だった自分をちょっぴり恥ずかしく思うのでした。