「この子たちは1カ月ほど前に接ぎ木したものだよ」
ハワイ島コナのコーヒー農家・クレイグが教えてくれます。彼が蓋を開けた衣装ケースのような箱の中には水が張られ、小さな苗が並べられていました。
「接ぎ木は、いわば頭をちょん切ってすげ替えるようなものだからね。直後はリカバリーのためにたくさんの水分を与えるんだ」
そもそも、コーヒーの木に接ぎ木の手法が使われているということを初めて知り驚きます。
コナの多くは「アラビカ種」
改良が多くおこなわれ、非常に難解なコーヒーの品種ですが、ものすごくざっくり分けると数種類に大別することができます。なかでもその味が評価されることが多いのがエチオピア原産の「アラビカ種」。コナで栽培されるコーヒーもそのほとんどがアラビカ種です。しかし、病虫害や環境の変化の影響を受けやすいというのが弱点。そこで、強い品種の根を利用し、その上にアラビカ種を接ぎ木するという方法があるのです。
強いぞ!ロブスタ&リベリカ
接ぎ木の「根」によく使われるのが、「ロブスタ種」。もともとコンゴで自生していた品種で、病気に強く比較的容易に栽培ができます。味は渋みが強く、その多くが缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料になるといいます。また、冒頭に登場したクレイグの農園で根に使われているのが「リベリカ種」。西アフリカのリベリアが原産で、こちらも環境の変化に強いとされる品種です。ちなみにこのクレイグを紹介してくれたのは、ハワイ島南部パハラでカウコーヒー農園を営むラスティズハワイアン。オールハワイ島で協力しながら、ハワイのコーヒー産業の底上げに奔走しているのです。
それでもお世話が一番大事
「でも一番大切なのは、毎日気にかけて、しっかりお世話をすること。接ぎ木をした強い木だって、雑草を抜いたり肥料をあげたりしなかったら健康には育たない」
クレイグがそう強調します。彼は自分のファームでも栽培する以外に、苗としてほかの農家さんにも多く販売。その後どう育つかは、引き取った農家さん次第だということです。きちんとお世話された接ぎ木のコーヒーの苗は、育つにつれその根を広く、深く張るのだといいます。そして上手に栽培すれば、最終的な収穫量は20%も多くなるのだとか。
生まれたままの姿で育った作物もすばらしいですが、私たちの食卓がこういった技術に支えられているということにもまた感謝したいと思うのです。