生でもおいしい、新たまねぎ。これによく似た甘みの強いたまねぎが、マウイ島の高原地帯では通年収穫されています。ハンバーガー、サラダなどで大活躍するこの「マウイオニオン」は、現地で大人気のロコの味です。
シェフの手にかかれば
「酸味が少なくてマイルドな味わいが魅力だよね」
島の食材を中心に使い、ジャムやソースなどの農産加工品を手掛けるブランド「マウイプリザーブド」のシェフ・アンソニーはそう話します。野菜の旨みのぎゅっと詰まった彼の「ホットホットソース」にもマウイオニオンが使われていますが、今日はこのたまねぎを主役にした「マウイオニオンピクルス」をつくってもらいました。
乾かして、むきやすく
「瓶に入れやすいゴルフボールサイズのマウイオニオンを、まず半分にカットするよ。そこから数日寝かせる。こうすることで外側の茶色い皮の部分だけうまくむけるんだ」
マウイオニオンは現地でもかなりの高値。収穫状況にもよりますが、写真のサイズでも通常のたまねぎの倍ほどの価格をつけるといいます。べろん、と食べられる部分までむけてしまった、ということがないように、丁寧に作業を進めます。
自家製チリペッパー
材料は、マウイオニオン以外に、ハワイアンチリペッパー、ローレル、ブラックペッパー、そしてアンソニー特製のピクルス液。アップルサイダービネガーがベースになっており、砂糖は使わないシャープな味わいが特徴です。ハワイアンチリペッパーは、ハワイでとれる小粒の唐辛子。小さな体ながらも、後からくるピリリとした辛みが癖になります。
「最近は、家の庭でもハワイアンチリを育て始めたんだ。品質もコントロールできるし、オーガニックで育てられる」
ローレルも、マウイの畑でとれたものを使っているといいます。
一層おいしく、農家を元気に
材料をすべて瓶に詰めたら、お湯を沸騰させた大きな鍋の中へ。
「中心まできちんと熱を通すけど、調理しすぎは禁物。やわらかくなりすぎてもおいしくないからね。適度な食感を残すのが大事なんだ」
シェフの微妙な火加減が味の決め手です。
最近は土地や肥料代、賃料上昇の影響で、マウイオニオン農家は減少傾向にあるといいます。しかし、当然ですが需要が増えれば供給しようという人も増える。アンソニーは、農産物を一層おいしく加工して、ハワイの農業を元気にしたい――。そう考えているのです。