「海水が塩になるまで、天気にもよるけど全部で5から8週間。そんなにかかるって、みんな知らないわよね」
ハワイ島西部のソルトファーム「コナシーソルト」の、メラニー・ケレコリオはそう言って笑います。彼女たちが塩を製造する方法は大きく分けて、「ホットハウス」と「ソルトトンネル(写真)」の2種類。そのどちらの場合も、塩ができあがるまでには相当の時間を要します。
テントの中は90度以上!? 「ホットハウス」
ビニールハウスの中に海水を張って、その中の気温上昇で水分を蒸発させていくのが「ホットハウス」製法。中の気温は高い時には華氏200度、摂氏でおよそ93度にもなるというから驚きです。
「もう本当に危険な暑さだから。収穫は朝一番の涼しいうちにやるのよ」
まだ日の昇る前、早朝5時開始なんてこともあるといいます。
「この高温で塩はフレーク状に結晶化する。手で簡単にくだけるから、料理の仕上げなどに愛用してくれているシェフが多いわ」
ファンで送風「ソルトトンネル」
冒頭の写真のように、ビニールの長いトンネルを利用するのが「ソルトトンネル」製法。端に設置された大型のファンで風を送って塩を結晶化させます。
「この製法だと結晶はかたまりに、そして固くなる。グラインダーで削って使うのがおすすめよ」
どちらの製法でも3から6週間ほどたったら、下部にドレインのついた装置に移動。ここで2週間放置して、最後まで液体として残る「にがり」を、自重を使って取り除きます。
「最初の工程で長く置きすぎないように気を付けているわ。そうするとにがりの成分も結晶化し始めて、苦い塩になっちゃうから」
極めてシンプルながら、きちんと考え抜かれた製法なのです。
前身は、藻の栽培
もともとは、マイクロアレジ―(微細藻)から、アスタキサンチンなどを製造していたというこの場所。持ち主はハワイ州政府です。
「私は1999年、マイクロアレジ―製造の時代からここで働いているわ。塩づくりを始めたのは2004年で、最初はホットハウスだけだった。私ともうひとりのスタッフしかいなくて、自分たちでホットハウスのための穴を掘ったりしたのよ(笑)」
たかが塩、されど塩。いただくときは、メラニーたちのようなスタッフによる、日々の地道な作業に少しだけ思いを馳せてみてください。