「世界中の人たちが、うちの両親の『ラブストーリー』に感動してくれる。それが私にとってはとってもハッピーなことなの」
ハワイ島南部、カウ地区のコーヒー農園兼焙煎所「ラスティズハワイアン」のジョアン・オブラ(写真中央)はそう話します。
早期退職勧告でコーヒー農家に転身?
島の西側コナ地区に続き注目を集めるカウ地区のコーヒー。なかでもラスティズハワイアンは、2010年の「ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会 競技会」で獲得した最優秀生産者をはじめ、数々の賞を獲得している近年人気急上昇中の生産者です。しかしそのスタートは意外なもので、「ニュージャージーの製薬会社で働いていた父ラスティは、53歳で早期退職勧告を受けたの。それで、祖父母の住んでいたハワイに移住することを考え始めたのよ」。と、ジョアン。1998年のことでした。
コーヒーよりお茶!だった、科学者夫婦
ジョアンの母・ローリー(写真右)はそれまで病院勤務。製薬会社勤務の夫とふたり、科学畑の人間でした。「それまで両親は特別コーヒー好きってわけでもなくて、どっちかっていうとお茶を好んで飲んでいたわ(笑)」。ジョアンは笑います。しかし友人に連れてきてもらったカウのコーヒー農園の風景をひと目見て、自分たちがやりたいのはこれだ!と確信したのだといいます。2000年にはニュージャージーの家も売却し、ふたりは晴れてハワイの住人となりました。
突然訪れた悲劇
しかし、コーヒー農家も様になってきた矢先、2006年に夫ラスティが急逝してしまうのです。「コーヒー栽培は重労働。私はまだアメリカ本土に住んでいたし、母ひとりで続けられるのかと心配したわ。でも、彼女は父の遺志を継ぐことを決めたんです」。カウコーヒーの名を世界中に知らしめたい、という夢をもっていたラスティ。ローリーはその夢のために邁進しました。徐々にコンテストでもその味が認められるようになり、2011年にはジョアンも夫のラルフ(写真左)とアメリカ本土から移住。現在では家族でラスティズハワイアンを運営しています。
「私にとって、コーヒーは、愛」。とあるインタビューの中でローリーはそう話しています。そんな両親のラブストーリーを誇らしく思う娘――。こんな素敵な家族があるでしょうか! 彼らの生み出す珠玉のコーヒー、どんな味がするかはぜひ一度ご自身でお試しあれ。