今回は、ビッグアイランドでコーヒー栽培と焙煎を手掛ける「ラスティズハワイアン」のジョアンから、コロナ禍で過ごす皆さんへの素敵なメッセージをお届けします。
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思い切って、飛ぼう
ラルフ*がトラクターに乗っているのを見るたびに、おかしくってしょうがないんです。
私たちが大学院で出会った21年前、彼の夢はスポーツキャスターになることでした。上等なスーツに身を包んで、大都市のテレビ局のキャスター席に腰かけて、優雅にアメリカンフットボールについて解説する――。イメージ、わかりますよね?
そして大学院を卒業してから6年がたったころ、ラルフは実際カリフォルニア州フレズノにあるNBC系列局の週末のスポーツ番組でキャスターとして活躍していました。私は同じくフレズノの新聞社で、フードライターとして勤務。仕事は信じられないほど楽しいものでした。でも、そこにやってきたのがリーマンショック。報道業界の未来にも暗雲が立ち込めました。
同じころ私の母ローリーは、ここハワイにいました。父ラスティが急逝した後、彼の始めたコーヒーブランド「ラスティズハワイアン」を引き継いでいたのです。私もラルフもアメリカ本土にいながら母のサポートを続けてきましたが、2011年、それまであくまで「プランB」だったものが「プランA」へと昇格。カリフォルニアの仲間たちに盛大に送り出してもらって、私たちはビッグアイランドへと移り住んだのです。いまではラルフは、毎日Tシャツにデニム。取り仕切っていたテレビ番組に代えて、年季の入ったピックアップトラックやトラクターを乗りこなしています。
しかし我ながら思うのは、この決断以外に道はなかったということ。現在の世界的コロナの状況下において、私たちはコーヒー農園で働くことのありがたさを身に染みて感じています。新鮮な空気、美しい海の景観、そしてソーシャルディスタンスで悩むこともない。ペットの犬たちにとっても、走り回るスペースは十分です(ちなみに、彼らはロックダウン中の最高の相棒です)。
最近になって、今後の人生について考えていると、何人もの友達から相談を受けます。彼らはまず、私の両親の移住話に感銘を受けていました。たしかに、緑茶ばっかり飲んでいた二人が、本土ニュージャージーを離れてハワイでコーヒー農園を始めたわけですから。同時に、サラリーマンだった私とラルフがいかに個人事業主になったのか、都市生活から田舎暮らしへと転換したのか、これもよく聞かれます。でも、過ぎてみればなるべくしてなったというか。今回のこの世界的大変動も、きっと思いもしなかったような方向へとあなたの人生を変えていくことでしょう。
私がいつも友達に伝えるメッセージは、あなたにとっても響くところがあるかもしれません。あなたは、自分が思う以上に柔軟に生きられるということ。だから、たとえいままでと180度違うことに挑戦するとしても、自分自身を信じて。何年か後に、それこそがあなたがやるべきことだったと気づくときがくるはずだから。
ラスティズハワイアン
ジョアン・オブラ
*ラルフはジョアンの旦那様です