太平洋のど真ん中にポツンと存在する孤島のハワイでビールをつくるということは、大陸のブルワリーが考えなくてよい課題を抱えているということでもある。Honolulu Beerworks(ホノルル・ビアワークス)のオーナー、ジェフ・サイダマンがその話をするとき、彼は淡々としている。常にそこにある向かい風について話すような、そんな雰囲気だ。
※ホノルル・ビアワークスの始まりのお話はこちらから。
創業者ジェフのブルワリーへの道
私自身にもよく分かるが、ハワイでビジネスをするという現実にはコストの高さがあり、チームを支える責任も重い。ホノルル・ビアワークスが必要とする原料や設備、交換部品のほとんどは船で運ばれてくる。納期は延び、輸送費は上がり、予期せぬ遅れが出れば醸造スケジュール全体に影響する。「すべて前もって計画しないといけないんだ。ここには“すぐに解決できる方法”はない」とジェフはふとシリアスな表情を浮かべ語る。新しいタンクや機械の導入でさえ、大きな物流プロジェクトになるのだ。
一方で、こうした厳しい条件がホノルル・ビアワークスの形をつくってきたのも事実だ。制約があるからこそ工夫が生まれ、距離があるからこそ独自性が育つ。流行を追うのではなく、ホノルル・ビアワークスは自分たちのペースで成長することを学んできた。ローカル文化、安定した職人技、この土地ならではの感覚に根ざした形でだ。
困難から生まれた価値観
「簡単じゃないよ」とジェフは肩をすくめながら言う。「でも、その価値はある」
ジェフは、ホノルル・ビアワークスを“人々が人生を楽しめる場所”にしたいと考える。単に酒を飲む場所でも、逃避する場所でもなく、くつろぎやつながりを感じられる場所。そのためには意図が必要で、時間もかかる。

そして、新しいカリヒの醸造所兼タップルームを見渡せば、その言葉が本気だと分かる。静かに動くブルワリーのリズム、仕込みの香り、地元にちなんだ名前が並ぶメニューボード。そのすべてが、ここで積み重ねられてきた時間を物語っている。困難は確かにあるが、ここには誇りも同じだけ存在している。それがホノルル・ビアワークスの「魂」をつくっている。
By Solario (アーティスト、シセロン資格保持者)
※この連載のコントリビューターであり、アーティストでビールのソムリエ・シセロン(Cicerone)の資格保持者でもあるSolarioについては、こちらからどうぞ。
ビールソムリエ・シセロン有資格者多才なソラリオのアートがおもしろい





