プランテーション時代のハワイで、フラワーサック(小麦粉袋)をリサイクルして作られていた「フラワーサックタオル」。その圧倒的な実用性と温かみで、現代も愛され続けるタオルを、ホノルルでていねいに作っている「ダウンタウン・ジェネラルストア(Downtown General Store)」です。
日系のキヤブ夫妻が紡ぐ、ハワイの伝統
オーナーのご夫妻は、レス・キヤブさんとペニー・キヤブさん。実は、日本にルーツを持つお二人。奥様のペニーさんはデザインやアートを手掛けていたキャリアがあり、ご主人のレスさんは、写真が趣味だったのだそう。そのお二人が、1980年にスタートしたのがダウンタウン・ジェネラルストア。最初は、シルクスクリーンプリントのグリーティングカードを作るスモールビジネスでした。
徐々にビジネスを拡大し、Tシャツやフォトカードなども作りはじめていった二人。そんな時に出会ったのが「フラワーサックタオル」です。
実は、ご夫妻がフラワーサックと出会ったのは、とあるクラフトフェアでのこと。それまで、ご自分たちが普段使いしていたわけじゃなかったんですって。
「もちろん、プランテーション時代の歴史は知っていたし、小さい頃に祖母たちが使っていたのを見た記憶もあります。でも、あらためて使ってみたらその使い心地に感動してしまって。薄手なのに水をしっかり吸うし、さっと乾くのもいい。なめらかで毛羽立ちもない。ちょっと、日本の“ふきん”に近いかもしれませんね。しかも、シルクスクリーンプリントにぴったりの質感。それで、自分たちのブランドとして扱い、次世代にも伝えていけたらと思ったんです」とペニーさん。
なるほど。それで、今のブランドスタイルが確立したのですね。さらに、日本生まれの私たちがなぜか懐かしさを感じる理由もしっくりきます。
人気は「桜」モチーフ…和を感じる懐かしさも魅力
「日本の文化に興味のあるローカルには、桜の花のデザインが大好評なんですよ。また、『おひなさま』や『鯉のぼり』など、日本の伝統モチーフも人気なんです」とのお話にも、なんだか納得。
ちょっと不思議なカルチャーミックス、興味深いです。
「もちろん、アメリカ本土や日本など世界中からハワイへ旅行に来た人がお土産に買ってくれることも多いので、ハワイらしいデザインも作り続けています。ハワイの花、レイ、ハワイアンキルト、パイナップルなどの柄がとくにポピュラー。ウクレレのモチーフも、ハワイアンミュージックファンがまとめ買いされたりするんですよ」。
ローカルにも旅行者にも愛される、シンプルなタオル。想い出を持って帰ったり、お土産にしてストーリーをシェアしたり、この一枚にいろいろな物語が詰まっている感じもたまらないのです。
一度使うと、ほとんどの方がまたリピートするという、フラワーサックタオル。毎年登場する新作を目掛けて必ず新調する、というローカルのファンも多いとか。ちなみに、数え切れないほどある絵柄は、ご夫妻や息子さんたちのデザインによるものだそう。
レスさんが、プリンターの台にタオルを一枚ずつ置き、ウォーターベースのインクを均等に伸ばしてハンドプリント。毎回「一発勝負」の緊張感がアトリエに漂います。大型ドライヤーでゆっくり一枚ずつ乾燥させたタオルは、ペニーさんの手により一枚ずつ折りたたまれ、スリーブを付けてていねいに仕上げられていきます。
常に二人三脚、やさしく寄り添い合うキヤブ夫妻の愛情と手間、時間をかけて作られるフラワーサックタオル。使い込むほどにやわらかく、手にもなじむ一枚は、一度使ったら他のタオルに戻れない……というリピーターも多い逸品です。ペーパータオルを使う回数も減るから、もちろんエコフレンドリー。素敵でしょう?