ウォッカといえば寒い国で造られるスピリッツというイメージが強い。これが南国・ハワイで造られているといえば、多くの酒愛好家は戸惑うことだろう。
映画「007」シリーズでジェームス・ボンドが呑むカクテル「ウォッカ・マティーニ」は、なんとなくポーランドかロシア産ウォッカがベース・スピリッツというイメージ。
「セックス・アンド・ザ・シティ」でキャリー・ブラッドショー役のサラ・ジェシカ・パーカーらが呑む、淡いピンクの「コスモポリタン」はスウェーデンの「アブソルート」か。・・・いや敢えて当時はまだ知名度の低かったフランスの「グレーグース」辺りと推理すべきかもしれない。
とかく、ウォッカと「常夏の島」のイメージは結びつきにくい訳だが、北緯20度・太平洋上に浮かぶマウイで造られるこのPAUウォッカの意外性はその立地的な驚きにとどまらない。なんと「100%パイナップル原料」なのである。Unbelievable!!
今一度言わせていただく。ウォッカベース・カクテルの「割りもの」としてのパイナップルでもなければ、「パイナップル果汁を加えたトロピカルなウォッカ」といった退屈な話ではない。「パイナップルから造られるウォッカ」なのである!
品種は「マウイ・ゴールド」。言わずと知れた常夏ハワイを代表するマウイ島産のジューシーなパイナップル銘柄だ。PAUを造る「ハリイマイレ蒸溜所」はマウイ島中北部。パイナップル畑に囲まれたのどかな町に佇んでいる。
さて「ウォッカ」といえば、雑味のないスッキリしたテイストのハードリカーである。パイナップルから造られることから「パイナップル味なの?」と疑問を抱かれがちだが、前述の通り決して”パイナップル・フレーバー・ウォッカ”などではない。味わいは生粋の「本格ウォッカ」である。
ならば、麦やトウモロコシといった穀物系原料の一般的なウォッカとどう異なるのか?といえば、ピリっとするアルコール感が度数の割に、どこか穏やかな印象。この口当たりは、なんと言ってもパイナップル由来のものであろうと私は考察する。
ウォッカベースのトロピカル・カクテル代表格といえば「チチ」が挙げられる。パイナップルジュース、ココナッツミルクと共にで作られるこのチチは、ハワイ生まれのカクテル。
トロピカル・カクテルを作るならば、ロシアやポーランドのウォッカよりもパイナップルから生まれるマウイ島のウォッカの方が明らかにマッチングは良さそうだし、気分も上がるというもの。
ボトルの雰囲気も、なんとなく映画カクテルのトム・クルーズがご機嫌なビーチバーで振り回していそうで良い。あらゆるバックボーンからしてこのPAUは、トロピカルカクテルを作るベース・ウォッカとしてこれ以上ない選択肢と言って良いだろう。
そういえば今夏、渓流釣りで軽井沢の山に分け入った際に野生の山椒を発見。一掴み実をもぎ取り手のひらに残った香りに思わず感動。結局トラウトは1匹も釣れなかったけれど、予想外のその”手土産”を持ち帰理ながら「これはやはりカクテルを作らねば・・・」と、軽くすりつぶした実と葉をグラスに入れる。ソーダとPAUウォッカを2:1で割って軽くステア・・・夏の夜の暑さ、そして悔しい釣果さえ忘れさせてくれる爽快な味わいだった。
爽やかな香りを活かしたいミクソロジー・カクテルにも、南の島のウォッカはお勧めである。