「ハワイの現地の人たちがハワイ産のコーヒーを飲むかって? まずないね。高すぎるよ」
オアフ島のコーヒー焙煎士アルフレッド・コッシーナは、私の質問に少々驚きつつそう答えます。ハワイはアメリカ合衆国の中でコーヒーの商業栽培がおこなわれているただひとつの州。「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道南北20度のエリアにぎりぎり入る場所です。世界的に知られるハワイ島のコナコーヒーだけでなく、マウイ島、カウアイ島、モロカイ島、そしてハワイの玄関口オアフ島でも、コーヒー豆が栽培されています。しかしアルフレッドが言うように、その価格は比較的高価。理由はなんなのでしょうか。
「一番は、賃金の高さ。ハワイ州で取り決められている最低賃金は10ドルを超えるけど、コーヒーの一大生産地であるコロンビアではたった1ドルちょっとなんだよ」
「生産量 < 流通量」の怪
加えて、その価格を吊り上げる要因のひとつが流通量の少なさ。
「コロンビアの1年間の生豆生産量は約22万トンを超えるけど、ハワイ産は約3400トン」
世界で5本の指に入る生産量の国が比較対象とはいえ、約64分の1という数字からはハワイのコーヒー豆が世界的に見ていかに希少かおわかりいただけるかと思います。当然、供給が少なければ市場の原理で価格は上がる。そのためハワイ産100%のコーヒーを飲もうとすれば、現地でも1カップ6ドル、8ドルなんてのはざらなのです。供給に対して需要が高いことから、ハワイ産を偽装するメーカーがいるのも事実。実際コナコーヒーを例にとると、現実に生産された豆の量より、世界中で「コナコーヒー」として販売されている豆の量のほうがかなり多いのです。
ハワイへの想い、その値段?
だからといって、ハワイのコーヒー産業に関わる人たちが、法外なマージンを乗せてぼろもうけしているわけではもちろんありません。
「やっぱりアメリカ本土とか、日本とか、ハワイが好きだけどそんなに頻繁に行けないっていう人が、現地を懐かしむために買ったり、来たときのおみやげとして買ったりするのがほとんどだよね」
加えてコーヒーは嗜好品。物質的価値のうえにさらなる付加価値を乗せて、その金額を喜んで払う、そんな人たちによって支えられています。
「ハワイは観光客に支えられている。コロナは本当に大打撃だよ。早くみんなに戻ってきてほしい」
現地の状況は切実です。