「ほかの国からコーヒーの生豆を買うとき、ブローカーの存在はとても大きいんだ」
有名ホテル、レストラン、ハワイで大きなクライアントを多く持つ、コーヒー焙煎士のアルフレッド・コッシーナはそう話します。自ら農園の視察に行ける場合は、直接農家とやり取りすることもあるそうですが…
「農園の生産量すべてを自分が買い取れるわけでもないし、逆に天候の影響などによる収穫量の変化なんかで、その生産者だけでは僕が欲しい量に届かない場合もある。そんな買い手と農家の間に入って、需要と供給のバランスを調整してくれるのがコーヒーブローカーなんだよ」
セーフティネットの役割も
ブローカー、という単語を聞くと、「商品を右から左に動かすだけで高いマージンを取って金儲けしている!」など、日本ではあまりいいイメージを持たない人も多いかもしれません。しかし、彼らこそアルフレッドのような買い手に代わってたくさんの農家と直接やり取りし、供給の安定を図ってくれる存在。なくてはならない人たちなのです。
「新しい豆を買うときは、まずブローカーからサンプルを取り寄せる。それを焙煎してみて、良ければオーダーをかけるよ。もしも実際に届いた豆の状態がサンプルと異なれば、送料も向こう持ちでブローカーが引き取ってくれる。そういうセーフティネットのような役割でもあるんだよ」
まあそんなことまず起こらないけどね、と笑うアルフレッド。現在は約10か国から生豆を仕入れているといいます。
農家さんは家族
情報の供給者としても、ブローカーの存在は大きいといいます。
「フェアートレード、バードフレンドリー、オーガニック、熱帯雨林保護…。そういう取り組みをしている豆かどうかなど、彼らを通してすごくたくさんの情報を得ることができるんだ。なんたって、ブローカーは現地に行って農家と直接話しているからね」
そんなブローカーですが、誰とでも商売をしてくれるわけではありません。
「彼らは信頼関係のもとに仕事をする。農家は彼らにとって家族のような存在だから、売り先も信頼できるところとしか取り引きをしない。もっとも、僕にだって駆け出しの時期があったわけだけど、人の紹介や、そのあとのやりとりで信頼を築いて40年たった、そんな感じだよ」
WEBでいつでも世界中とつながれるこの時代。でも、やはり対面でのコミュニケーション、信頼に基づくやりとり、そういった人間ならではの取り組みは欠かせないのです。