アメリカを旅するとまず困惑するのが、パンにつけるジャム類の多さ。「Jam」は日本のジャムと同じものと思ってさほど問題はないのですが、じゃあ「Jelly」と言われてなんだと思いますか? これがいわゆる日本語の「ゼリー」とは別物、パンに塗って食べるものだというからさあ大変! 今日はこのとっても厄介、でも知ると楽しい、スプレッドの定義について攻め込みたいと思います。
ジャム、ジェリー、ジェロ―の罠
まず「ジャム/Jam」は、フルーツピューレを砂糖と煮詰め、ペクチンなどを加えて固めたもの。果肉などの固形物が残っているのが特徴です。対して「ジェリー/Jelly」は、こして果肉を取り除いたクリアなジュースに砂糖とペクチンを加えて固めたもの。さらに少々専門的な話をすると、日本のJAS規定でジャム類は糖度40%以上ですが、国際規格では65%以上。ちなみに、日本でいう「ゼリー」は、英語では「ジェロ―/Jello」といいます。
…みなさーん!ここまでついてきていますかー?
ハワイでおなじみ、リリコイバター
「マーマレード/Marmalade」は、主に柑橘類を皮ごと使ったジャム状のもののこと。独特の苦みが特徴ですが、味わいの面だけでなく、皮の部分に多く含まれるペクチンが液体を固めるのに一役買う意味もあるのだといいます。さらに、最近日本でも人気を集めているものに「フルーツバター/Fruit Butter」があります。これはフルーツに砂糖、そして卵やバターを加えて煮詰めた濃厚なスプレッドのことを指し、カスタードのような口当たりが特徴です。ハワイでも「リリコイバター」はおみやげでも大人気の商品。リリコイ=パッションフルーツの果汁を使用してつくられています。
バター VS カード論争
しかし、ここからが少々ややこしい部分。一般的な英語圏ではこのような「フルーツ+砂糖+卵+バター」は、バターではなく「カード/Curd」と呼ぶことが多いんです。これにならうと、ハワイでいうリリコイバターは一般的には「パッションフルーツカード」。フルーツバターは、フルーツに砂糖、場合によってはスパイスなども加えて煮詰めたものをいい、卵やバターは入れないんだそうです。「フルーツバター」なのにバターは入っていないなんて! なんとも悩ましいネーミングです。
でも、言葉はそれぞれの文化の中で変化し、育っていくもの。「ハワイのリリコイバターは、卵&バター入りのこってり味が多い!」ってことを頭の片隅に、さまざまな文化を柔軟に楽しみたいですね。