「パンの木」という名前を聞いたことはありますか? 英語で「ブレッドフルーツ」。そのままじゃない!と思わず突っ込みたくなるのですが、れっきとした正式名称なのです。
火を通せばその香りは…
ハワイではよく目にする一般的な果実で、現地の言葉では「ウル」と呼ばれています。葉っぱがハワイアンキルトのモチーフにも使われており、「一生食べるものに困らない」というメッセージが込められているのだそう。果実は直径10㎝から大きいものでは30㎝にもなる真ん丸の実。ホイル焼きやオーブン焼きで食べられることが多く、熱を加えるとなるほど、パンのような芳醇な香りが漂います。味はいものようなほくほくとした印象。熱帯に育つフルーツながらも、どこか私たち日本人にもなじみやすい味わいです。
はるばる海を渡って
ハワイには、「カヌープランツ」と呼ばれる植物のカテゴリーがあります。ウルも、20数種類あるといわれるこのカヌープランツのひとつ。カヌープランツとは、かつてほかのポリネシアの島々から、カヌーに乗った人々とともに持ち込まれた植物のことをいいます。要は外来種なのですが、数百年、ものによっては千年も前に海を渡り、ハワイの人々にとって重要な意味をもつようになった植物も多数あるため、近年持ち込まれたものとは区別し、敬意を込めて「カヌープランツ」と呼ばれているのです。
パン以上の栄養価?
英語で「ブレッドフルーツ」と呼ばれるゆえんは、その香りだけではありません。炭水化物がじつに豊富なのです。ほかにもたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養価が高く、近年改めて注目度が上昇しています。最近地元のスーパーでよく見かけるのは、「ウルチップス」。薄くスライスしたウルを油揚げたスナックです。
タロイモとはカヌー友達
ハワイの伝統的な主食、タロイモのチップスで大人気の「ハワイアンチップカンパニー」の店頭にも、最近ウルチップスが登場。タロチップ同様、キャノーラ油でからりと揚がっており、ウルの滋味深い味わいと相まって手が止まりません。そうそう、タロイモもウルと同じくカヌープランツのひとつなんですよ。はるばる海を渡ってきた彼らの祖先に思いを馳せつつ、舌鼓を打ってみてはいかがでしょう。