ハワイのモーニングプレートには欠かせない、スパイシーな味わいの「ポルチュギーズソーセージ」。マウイ島の「アンクルルイ」は、このポルチュギーズソーセージの人気メーカーです。1980年に食肉加工所としてビジネスをスタートしたオーナーのケンでしたが、大型スーパーの進出により業績が悪化。よりオリジナリティの出せるソーセージブランドへと転身を遂げ、現在の人気ブランドにまで育て上げました。
転校はさせたくない!
食肉加工所を閉めたとき、スタッフは全員解雇。残ったのはケンと妻のリンのふたりきりでした。リンが事務を担当し、ケンはソーセージ作りと配送に駆け回る日々。
「手が足りなくても、元手がないから人を雇えない。当時ふたりの子どもたちは私立のカトリックスクールに通っていたんだけど、どうしても転校はさせたくなくて。妻とふたり、死に物狂いで働いたよ」
その後徐々に売り上げが増えるに伴いスタッフを増やし、いまでは10名ほどがケンのもとで働いています。
カトリック信者の夫、仏教徒の妻
二人三脚で歩んできたケンとリン。しかし5年前に、リンはこの世を去ってしまいました。ケンは彼女の思い出を、懐かしそうに、そして寂しそうにゆっくりと話してくれます。
「リンは沖縄の人。もともとは仏教徒だった。でも私はカトリック教徒で、結婚式はカトリック式でやりたかったんだ。そうしたら彼女は式の前6週間教会に通って、キリスト教について学んでくれた。洗礼も受けて、そしてカトリックの教会で式を挙げたんだよ」
「でも」、とケン。彼女の葬儀はカトリックではなく、仏教式でおこなったのだといいます。
「彼女の本当の心の中は、最後まで仏教徒だったんだと思う。だから、最後は仏教式で送ろうと決めたんだ」。ふたりの始まりもお別れも、あふれていたのはお互いへの限りない思いやりでした。
沖縄の味、ロコのお気に入りに
ケンはその後、「リンの沖縄ソーセージ」という商品を発売します。
「毎年新年には、彼女とお母さん、おばあさんみんなで沖縄の豚肉料理をつくってくれていた。この料理からアイデアを得て、開発した商品なんだよ」
砂糖しょうゆのこの味は、甘いもの好きなハワイのロコたちに大好評だといいます。ケンが愛する妻に捧げた味。ハワイに訪れた際には、ぜひ味わってみてください。