ワイキキからマッカリー通りを山側へ向かい、車で10分程度。サウスキング通りを右折した角に、ちょっとノスタルジックな風情の建物があります。薄いグリーンのビルに、いくつか並ぶショップやローカルビジネスのオフィス。その中にあるのが「ウィミニ・ハワイ」です。
扉を開けて入るとそこは、工房のような、カフェのような、明るくて温かみのある店内。エントランスの壁で迎えてくれるのは、大きな「MR. MELLOW」のアートです。優しい笑みをたたえるMR. MELLOWは、オーナー兼デザイナーのチノ・ユタカさんが生み出した、Wiminiの看板キャラクター。不思議な癒やしの魅力にあふれていますよね。
ハワイのバス釣り名人が作るTシャツとは?
チノさんは東京出身。渡米してサンフランシスコで生活した後、1992年にハワイへ移住しました。旅行会社での経験を経て、1999年からは大好きだったバス釣りの腕を活かし、「旅行者向けバス釣りツアーガイド」という仕事をスタートしたそうです。
「自然と対峙しながらお客さんと接する仕事、楽しかったですよ。それでね、あるとき釣りに来たお客さんに向けて、お土産用にTシャツを作ってみたらどうかなと思い立ったんです。Tシャツ作り自体はまったくの素人でしたが、もともとイラストを描くのは好きだったので。娘がいたから、かわいくてやさしい気持ちになれるようなデザインのTシャツがいいかなって始めたんですよね」とチノさん。
独学で試行錯誤しながら身につけたシルクスクリーンプリントの技術と、チノワールド全開な独特のキャラクターたちが、絶妙にマッチする世界観。それらが好評を博したことから、2007年に「ウィミニ・ハワイ」を創業させたのだそう。以来、ここホノルルで、Tシャツやベビーウェア、トートバッグなどを一枚一枚ていねいにハンドプリントしています。
アメリカン・ポップアートと癒やしの融合
チノさんのアート活動に大きな影響を与えているのが、アメリカのポップアートやフードパッケージのキャラクター。
「やっぱりアメリカへの憧れっていうか、好きな気持ちがずっとあったんでしょうね。だからこそ単身渡米したわけで。中でも1960年代に活躍したポップアート作家、ロイ・リキテンスタインの作品にはインスパイアされた部分が大きいですかね」。
ロイ・リキテンスタインといえば、新聞に連載されている“漫画”の一コマを拡大、印刷インクのドットを活かしたスタイルのアートが有名ですが、たしかにWiminiのプリントって小さなドットが効果的に表現されています!とっても自然だから、言われるまで気づかなかった…。色数をおさえながら深い表現をするシルクスクリーンプリントにおいて、このドット(網点)の存在は大きな鍵になっているのかもしれません。
ポップながら緻密、そしてユニークで温かみを感じるWiminiのデザインには、チノさんの思いや歴史が詰まっている。ひとつひとつにストーリーが感じられる。だからこそ、ローカルにも旅行者にも長く愛され続けているのですよね。
ちなみに、チノさんのスクリーンプリントには、Made in Hawaiiならではの「特別なこだわり」も。そのお話は、また次の機会にご紹介させてください。