「うちのモットーはとてもシンプル。自分たちが作りえるベストなものをつくる。コストは二の次だよ」
同じ名前で続くハワイでもっとも古いお菓子工場「メネフネマック」の社長、ニール・アラカキはそう話します。たしかに、メネフネマックのマカダミアナッツチョコレートは安くありません。でも、多くのハワイみやげで外国産が使われるマカダミアナッツもすべてハワイ産、チョコレートは口溶けのよいクーベルチュールを使用するなど、その価格は味に対するこだわりゆえです。1972年にニールの父、パトリック・アラカキが会社を引き継いだ際、商品ラインナップは全部で3種類のチョコレート菓子でした。「いま販売しているそれ以外のチョコレートは、ほとんど僕が開発したものなんだ」。ニールがそう教えてくれます。
失敗作は、日本の国民食!?
「最近は妹のスーザンも商品開発に携わっていて、彼女のほうがセンスがいいよ。僕は男の子だからよくわかんないなぁ」。そんなふうにおちゃらけるニールですが、彼の商品開発歴を聞くと、とても斬新でユニークです。「オレンジクリームマカダミアは大成功だったな。せんべいの入った『ダークチョコレート・アラレ』、これも人気だね」。逆に失敗作を聞いてみると、「カレーチョコレート。日本のカレーを使ったんだけど、味を強くしすぎたんだ。しかもチョコの色が濃いから混ざってるんだかどうだかよくわからなくて……、辛いのが固まっているところを食べてしまったら涙は止まらないし、もう散々だったよ」。たくさんの失敗があるからこそ、人気フレーバーが生まれるんですね。
いつか実現したい憧れのフレーバー
そんなニールには、いつか必ず完成させたい商品があるといいます。「『フレンチバニラフレーバー』。バニラフレーバーは長持ちしないから、商品化がすごく難しいんだ。バニラの味わい自体は強いんだけど、アルコールに依存する香りだから、時間がたつとアルコールと共に消えていってしまう。『フラッシュオフ』という現象だよ」。アイスクリームのバニラ味が消えないのは、冷たい状態だとフラッシュオフが起きないからなんだそうです。
週7日、日々の業務に追われているニールですが、常に7つ、8つの開発中フレーバーを抱えているそう。「40年もチョコレートと付き合っているからね。どうしたらおいしくなるかは、大体わかるんだよ」。そんな言葉と共に、チャーミングなウィンクが飛んできました。