2020 05.22 fri

パイナップルひと筋!
キャリーが実家の畑を
廃業した理由とは

Maui Gold Is the Only Survivor?
The Situation about Pineapples on Maui

「このあたりの区画は、ちょうど植え付けから3カ月くらいかな」
マウイ島ハレアカラ山麓の畑で、マウイゴールドパイナップルの説明をしてくれるキャリー(写真左)。ピックアップトラックを運転しながらすべての畑の状況を的確に教えてくれるその様子に、ここで働いて何十年にもなるんだろうな…と思っていると「まだ2年くらいかな」。ええ!本当に?そのパイナップルの知識は一体どこから?

海パイナップル、山パイナップル

キャリーが現在働くマウイゴールドパイナップルの畑は、標高300mほどの高原地帯に位置します。栄養豊富なハレアカラの火山土壌とさんさんと降り注ぐ日差し。朝晩冷涼な気候がおいしいパイナップルを育みます。その高い糖度と低い酸度から、キングオブパイナップル、なんて呼ぶ人もいるそうです。
「僕はもともとはね、別の場所でパイナップルを育てていたんだ」
赤土の畑を行くトラックのなかで、キャリーがそう話し始めました。
「うちが畑をやっていたのは、マウイ島のハイクという場所だよ」
ハイクは島の北側。海まですぐで、マウイゴールド畑がある内陸の高原地帯とは気候がまったく異なります。
「パイナップルの育ち方が全然違ったし、そもそも僕が育てていたのはマウイゴールド種じゃなかった」

不動産開発と、農業と

ハワイでは20世紀になってから、大きなパイナップル農園が登場するようになります。その多くは缶詰に加工されて島外へ。これがハワイの経済に大きな利益をもたらしました。
「うちが育てていたのも、缶詰用のパイナップルだったんだ」キャリーはいいます。しかし、2009年で家業の畑はたたんだというキャリー。理由は価格競争だったのでしょうか?
「いや、もう本当に土地がないんだよ。マウイゴールドはいまもこれだけの広大な畑を継続できてるからラッキーだけど。僕の家族がもともとやってたハイクのあたりの土地は、どんどん売却されていっちゃったんだ」
ビジネスにおいて不動産開発に勝るものはないのだと、キャリーはハワイの現状を語ります。

旅行で訪れて、「ハワイといえば、パイナップルだよね!」と、畑を見学したり、地元ならではのフレッシュな味に舌鼓を打つ。そして夜にはリゾートホテルに宿泊。私たちが当たり前だと思っているそんなツアープランは、ものすごく複雑な現代ハワイ社会のうえに成り立っているものなのかもしれません。