2019 09.20 fri

テロがおみやげ市場に
もたらした大きな影響
日本人の審美眼は?

911 Changed Japan Omiyage Market Completely
What Happened to “Menehune Mac”?
MENEHUNE MAC

「日本のおみやげ業界は変ってしまったんだ。911を境にね」
2019年9月でなんと80周年を迎えたチョコレート工場「メネフネマック」の社長、ニール・アラカキはそう嘆きます。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以来、日本人のおみやげショッピングが激変したというのです。

希少なハワイ産マカダミアナッツ

工場を前任者から買収したのは、ニールのお父さん、パトリック・アラカキ。いまから100年ほど前に、両親が沖縄から移住してきた日系2世です。
「父は買収後にまず、チョコレート、そしてマカダミアナッツをアップグレードした。うちではすべてハワイ産のナッツを使っているけど、いまじゃ他になかなかないよね」
安価なおみやげ品は、アメリカ本土や他国産を使っていることが多いのです。

持ち帰らなくていい「おみやげ」

「父は、ハワイで初めて海外への輸出を始めたうちのひとり。起業家気質ですごくエネルギッシュな人だったからね。彼にとってハワイは小さすぎた。ちょうどそのころ日本人の間でハワイ旅行がブームになってきて、売り上げもすごく伸びたんだ」
たくさんのおみやげを自分たちで持ち帰りたくない人たちに向けての、カタログおみやげビジネスがぐんと成長した時期。一時期にはメネフネマックの売上の85%が日本のセールスだったというから驚きです。

在庫を抱える恐怖

「911のテロのあと、海外旅行をする人がすごく減った。そこにSARS、鳥インフルエンザが追い打ちをかけたんだ」
海外おみやげ市場は大打撃を受けました。すると何が起こったかというと、「業界のマネジメントがすごく保守的になった」と、ニール。テロの際にたくさんの在庫を抱えて立ち行かなくなった経験から、どこも安いものを、なるべく少しずつしか発注しなくなったのだといいます。となると、高品質な彼らのチョコレートは途端に「高い」、と言われるように。ニールは選択を迫られました。

おいしいから、しか理由はない

「結局、安価な機械製造より、ハンドメイドでつくることを選んだんだ。なぜって? 単純にそのほうがおいしいからだよ」
テンパリングと呼ばれる温度調整の過程で、機械だと温度が急激に下がることで砂糖の結晶が大きくなるといいます。
「そうすると口の中でまず甘みがくるんだ。でも、ハンドメイドだと砂糖の粒が小さいから、よりカカオ本来の味が感じられる。同じ砂糖の量でも、ね」
絶品チョコレートの裏側には、おいしさを追求する男の強い決意がありました。

BRAND ブランド紹介

MENEHUNE MAC
メネフネマック オアフ島

1939年創業、ハワイに現存する最も古いマカダミアナッツチョコレート工場です。手作業でのチョコレート菓子づくりにこだわり、一箱ひと箱ていねいに製造。その品質が評価され、オリジナルブランドのみならずローカルのホテル・ブランドのチョコレートも手掛けます。マカダミアナッツはすべてハワイ産を使用しています。