「タロイモは、葉を切り落とした茎を植え付けてまた育てるんだ。収穫したのと同じ日に植え付けまでやるのがうちの家族のやり方。それもあって、作業開始は朝の3時半だよ」
マーク・コガは、カウアイ島北部のハナレイに暮らす日系タロイモ農家。地区の9農家で150エーカーの畑を耕しています。
ハワイアンにとってのタロイモ
タロイモは、主に水を張った「ロイ」と呼ばれる水田で育ち、さといもに似た大きな葉っぱが特徴。古くからハワイで主食として愛され、蒸してすりつぶし、ペースト状にした「ポイ」が伝統的な食べ方です。ハワイアンの人々はタロイモから生まれた、という伝説があることからも、文化的にもいかに重要な存在であったのかがわかります。
「昔はハワイのどの家庭のテーブルにも必ずポイがあったっていうよ。日数がたつと、菌の働きでだんだん発酵する。絶対に捨てることはせずに、そこに新しいポイを足していくんだ」
その栄養価と消化の良さから、赤ちゃんの離乳食としても重宝されるポイ。近年は大豆、乳製品などにアレルギーをもつ人々向けの代替食としても注目を集めています。
自然保護区でもあるハナレイのタロイモ畑
ハワイのタロイモのなかでも、ベストとの呼び声が高いのがここハナレイ産。背後に雄大な山々を背負った水田の様子は、どこか日本の里山のよう。自然保護区でもあり、さまざまな水鳥が畑に遊びます。
「彼らにとっては、僕たちがゲスト。ここはずっと昔から水鳥たちの土地なんだ。僕らは彼らの住処を守るために、毎日せっせと働いているようなものさ(笑)」
マークは冗談ぽくそう話しますが、大きな自然の中に人間がお邪魔させてもらっている――。その謙虚なきもちがあるからこそ、おいしいタロイモが育つのでしょう。